膵臓癌は現代医療をもってしても予後不良の癌であり、病変が見つかった時には治癒する事が困難であることが多いのが現状です。TS-1やGEM(ゲムシタビン)などの従来の化学療法に加え、2013年以降はFOLFIRINOXやnabPTX(パクリタキセル)を用いた化学療法が承認され、膵癌に対しての治療効果は上がりましたが、満足出来る成績とは言えません。
膵臓癌を治癒するためには、いかに切除できる早期癌を発見できるかに尽きます。以前は2cm以内で見つけることが目標でしたが、現在は1cmを境に予後が大きく変わる事が示されており、1cm未満の腫瘍を発見することで膵臓癌の治療成績を挙げる必要があります。例えば1cm未満で切除できた症例では5年生存率が80.4%と長期生存する予後が示されている事からも、その重要性がわかります。
しかし、1cm未満の腫瘍はほとんどが症状なく存在しており、拾い上げ診断をしていくことは困難です。そのために高リスク群の患者や膵嚢胞や膵管拡張を疑った患者を集約し、定期的なフォローアップすることで、その発見につなげていくことが望ましいのです。それを実践したのが尾道医師会であり、尾道市民病院・尾道総合病院を軸とし、近隣の開業医と連携して患者のフォローアップを行い、膵癌の早期発見に努めた尾道早期膵癌プロジェクトであります。このプロジェクトにより早期膵癌の発見が増加し、尾道では膵癌の5年生存率は全国平均に比べて約1.5倍の約20%という結果を残しています。
これに習い、全国でも膵癌早期診断の活動が活発化し、今回十勝でも膵癌の早期診断に向けプロジェクトが立ち上げられました。帯広に比べ、当院の医療圏である清水町・新得町・鹿追町はこれまで膵臓の精査を受ける機会が少なかったが、小生が清水赤十字病院に赴任し、超音波内視鏡検査(EUS)を導入したことで、膵臓に対しての精査が可能となりました。とは言っても、1cm未満の膵癌を見つける事はたやすいものではなく、高リスク背景の拾い上げや継続したフォローアップに基づいて発見が可能となってくると言えます。
当院医療圏における膵臓癌の早期発見と治癒率の向上を目標にかかげ、十勝全体の膵癌死亡を減少できるように努めていきたいと思います。
膵臓は食事を分解する消化酵素液をだす臓器です。
膵臓から発生する膵癌は、他の癌と比べ早期発見がとても難しく、5年生存率(診断から5年経過後に生存している患者さんの比率)がよくありません。
5年生存率を上げるために"手術可能な小さな膵癌をいかに早期に見つけるか"がとても重要で、日頃から定期的な採血検査や画像検査をしておく必要があります。
医師会は膵癌早期診断プロジェクトを開始しました。
チェック | 内容 |
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原因不明の上腹部の痛み、背中の痛みがある | |
膵がんにかかった人がご家族にいる | |
急性膵炎、慢性膵炎と診断されたことがある | |
1日3合(ビール1.5L)程度飲酒する または 少量でも休肝日がない | |
糖尿病を発症されてから3年以内である | |
糖尿病の急速な悪化がある | |
健診等で肝臓・膵臓の酵素の値が上昇している | |
健診等で「膵のう胞」診断されたことがある | |
腫瘍マーカー(CEA、CA19-9が高い) |
1つでも当てはまった方は消化器内科に相談ください。
連絡先
医療機関からの相談も受け付けております。 |