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外科

下肢静脈瘤
1.なぜ、下肢静脈瘤が出来るのか?

足の静脈の血液を心臓方向に一方通行させる弁の機能が壊れ、血液が逆行することでできます。長時間の立ち仕事や高齢者、妊婦、身内に静脈瘤の人がいる場合などに多く、軽症を含めると成人女性の一割が持っていると言われます。症状は足がだるい、むくむ、つる(こむら返り)など、悪化すると湿疹や潰瘍になる場合もあります。

2.下肢静脈瘤の検査

当科を受診されますと、ドップラーやエコー検査、空気容積脈波検査、3DCTなどの非侵襲的検査法により下肢静脈瘤の病態について精査します。そして、静脈瘤による症状なのか、また静脈瘤であれば外科治療が良いのか、保存的治療が良いのかを判断します。

超音波ドップラー法

患者さんに立っていただき、簡易超音波血流計を使用して、表在静脈の血液逆流の有無と程度を検査します。

空気容積脈波検査

下肢を上げ下げしたときの下腿の容量変化を、空気を媒体として測定することで無侵襲的に下肢全体の静脈還流機能を定量的に評価できます。下肢全体の静脈逆流、静脈閉塞および下腿筋ポンプ機能を測定できます。

ABIフォルム

動脈疾患併存の有無を見るためにおこないます。四肢血圧を自動測定し、下肢動脈の狭窄・閉塞を判定できます。血圧測定と同時に脈波伝播速度(PWV)も自動計測するので、動脈硬化の程度も判定できます。

超音波エコー検査

下肢静脈瘤は、通常、表在静脈の血液逆流により出現しますが、深部静脈の逆流や血栓症、不全交通枝による症状を認めることがあります。この場合は超音波検査による評価が必要です。

三次元CTスキャン撮影法(3DCT)

マルチスライス3DCTにより、造影剤を使わずに下肢の静脈瘤を撮影します。表在静脈の走行や拡張の程度、不全交通枝の有無を立体的に評価できます。手術適応および手術方法を決める上でもきわめて有用です。

3.下肢静脈瘤の分類と治療
下肢静脈瘤の4つのタイプ

上述した検査を施行し、下肢静脈瘤の病型分類や重症度を評価します。静脈瘤は逆流する血管の種類により以下の4つのタイプに分類されます。

伏在型静脈瘤ではストリッピング手術※、血管内焼灼術※などの外科的治療が必要になります。他のタイプは、硬化療法、圧迫療法、薬物療法などの適応となります。適確にタイプ分類をすることが大切となります。
日帰りストリッピング術血管内焼灼術※の項を参照してください。

ストリッピング術

手術により静脈瘤の原因となる伏在静脈を抜去し表在静脈瘤を切除する方法です。再発が最も少なく確実な治療法です。筆者は1997年以来、全国に先駆けて積極的に日帰りストリッピング手術をおこなっています。※日帰りストリッピング手術の項を参照してください。

血管内レーザー焼灼術

静脈瘤の原因となる伏在静脈内に、細いレーザーファイバーを直接挿入し、静脈瘤の原因となる血管を内側から焼却する新しい治療方法です。局所麻酔による日帰り手術が可能で、ストリッピング術と同様の効果が得られるといわれます。2011年1月より保険診療が認められるようになりましたが、当初は波長が980nmのレーザー治療のみで、術後の疼痛や皮下出血などの問題がありました。しかし、2014年5月より、より確実で合併症(術後疼痛、皮下出血など)が著しく少ない1470nmのレーザーが保険収載され、当院でも導入しています。※血管内レーザー焼灼術の項を参照してください。

フォーム硬化療法

軽いタイプ(側枝型、網状型、クモの巣状型)の静脈瘤に対して、硬化剤という薬剤を泡状にして(フォーム)静脈瘤に直接注射する治療方法です。外来にて治療が可能です。

高位結紮術(こういけっさつじゅつ)

静脈瘤の原因となる静脈を深部静脈合流部で結紮切除し切り離す治療法です。フォーム硬化療法を併用しますが3年以降の再発が多く最近はあまりおこなわれなくなりました。筆者は過去に1000例以上の経験がありますが、再手術が困難になること、および、ほぼ同等の侵襲でレーザーや日帰りストリッピング術が行えるようになったことから、適応を厳密にしています。

保存療法

弾性ストッキングや弾性包帯で、下肢にできた静脈瘤(こぶ)を外から圧迫することにより、静脈の逆流と静脈瘤内に血がたまるのを防ぐ方法です。しかし根本的な治療法ではなく、静脈瘤の進行を防ぐためのものです。

4.下肢静脈瘤手術後の体験談
  • K.Iさん 62歳 男性

    手術後1ヶ月
    「非常に脚が軽くなった。こむら返りもなくなり、熟睡できるようになった。これはとても不思議なことなんだけど、おしっこがとても気持ちよく出るようになった。手術前は、おしっこが出ずらくて泌尿器科にもかかっていたんだけど、ストレスがなくなったせいかな?・・・」 泌尿器科では、精査したが大きな問題はないと言われ投薬も受けていない。

  • M.Yさん 68歳 女性

    20代にお産を経験してから両下肢静脈瘤あり。瘤以外に症状がないので、手術を受けるか否か迷っていた。
    術後1週間
    「手術してから、とても脚が軽く感じます。瘤もなくなり綺麗になって、手術して良かったです。」

  • T.Tさん 50歳 女性
    術後1ヶ月
    「少しだるさが良くなったけど、正座するとまだ痛いです。」
  • T.Sさん 70歳 女性
    術後1ヶ月
    「こむら返りは全く起きなくなりました。何故だか分かりませんけど、両手のシビレもなくなったんですよ」
  • K.Kさん 51歳 女性

    術後1ヶ月
    「軽くなった感じはあまりはっきりしないけど、下腿のかゆみはなくなった。夜中つることもなくなりました。(ストッキング)をしていると楽です。」

  • I.Kさん 75歳 男性

    術後1ヶ月
    「とっても脚が軽くなった。もともと症状がないと思っていたので、こんなに脚が軽くなるとは思っても見なかった。」

  • F.Uさん 78歳 男性

    術後1ヶ月
    「かゆみと発疹が良くなった。また、あれほど冷たかった足が全然冷たさを感じなくなった。年も年なんで迷ったが、思い切って手術をして良かった。」

  • K.Tさん 55歳 女性

    術後6ヶ月
    「足がむくまなくなった。それに、もう長年膝に水がたまって良く抜いてもらっていたんですが、手術してから全く膝に水がたまらなくなったんですよ。関係あるんですか?

  • E.Kさん 71歳 女性

    右下肢静脈瘤ストリッピング 術後1ヶ月
    「右足は軽くなり指先も暖かくなった。左は手術していないけど、つる感じがなくなった。腰の痛いのも良くなって、両方の足の付け根が冷たく感じていたのが今は全くなくなった。」

  • H.Uさん 54歳 女性

    術後1ヶ月
    「1週間は痛くて仕事も辛かったけど、今はだるさもとれ、本当に手術して良かった。有り難うございました。」

  • M.Sさん 81歳 女性

    17年前、他院にてストリッピング手術を受け、4年ほど前から再発してきた。その時の手術がとても大変だったので、また年齢を考えると、手術を受けて良いものか否か迷っていた。 「こんなに簡単とは思わなかった。むくみも取れて足も楽になったし、もっと早くすれば良かった。」

  • H.Hさん 54歳 女性

    両下肢静脈瘤ストリッピング手術1ヶ月後
    「夜中、靴下を履いても冷たかった足が、術後は暖かくて暖かくて、布団の外に出すくらいになった。足は全くつらなくなった。手術して本当に良かった。」

患者さんの中には症状がそれほど強くないことから、受診を躊躇される方もおられますが、自然に良くなることはなく、徐々に悪化していきます。しかし、意を決して手術をされた患者さんの多くは、「脚が軽くなった。これならもっと早くに手術すれば良かった」と異口同音に喜びの声をあげます。さらに、「不眠症が治った」、「腰痛が治った」、「肩こりが治った」などなど思いもかけぬ副効用が得られる例もあります。これらの効果は、東洋医学的には「瘀血(おけつ)」が改善されるためと説明されています。

日帰りストリッピング手術
麻酔および手術方法

麻酔は局所麻酔を主としてさらに静脈麻酔と軽い全身麻酔を併用して行います。安全性が高く、また覚醒も非常に良好な麻酔です。手術は、静脈瘤の原因となる伏在静脈を抜去したのち、表在静脈瘤を創の目立たないStab Avulsion法により切除します。再発が最も少なく確実な治療法です。

本法の利点
1.高位結紮術と比較して
  • 再発率が極めて低い
  • 硬化療法が不要、従って硬化療法による合併症(アナフィラキシー、疼痛、色素沈着、水疱形成、血栓症、他)がない
  • 早期に症状が改善する
  • 上記に関連して、患者-医師の相互信頼が損なわれない(患者さんの期待にマッチした結果)
2.レーザー焼灼術と比較して
  • 再発率が低い(レーザー焼灼術は基本的に高位結紮をおこなわないため晩期に再発する可能性がある)
  • 術後エコー検査を頻繁に必要としない(レーザー焼灼術では、EHIT検索のためにエコー検査が必須とされている)
  • EHIT(血栓症)、皮膚熱傷、動静脈瘻、色素沈着、伏在静脈焼灼後の索状硬結などのレーザー焼灼術特有の合併症がない
3.従来の腰椎麻酔下ストリッピングと比較して
  • 簡単、安全、患者さんに喜ばれる(外来治療)
  • 患者さんの羞恥心が抑えられる
  • 術後早期(1時間後)より食事や歩行など、日常生活が可能となる
  • 早期歩行により深部静脈血栓症を予防しうる
  • 伏在神経障害が少ない
  • 術後疼痛が少ない
  • 高齢者(75歳以上)にも安全
本法の欠点
  • 創が最低2ヶ所必要(鼠径部φ15mm、末梢はφ3mm。いずれも半年後にほぼ消退)
  • 麻酔による制限がある
  • 腰麻下よりは少ないが、伏在または腓腹神経障害を来す可能性がある
日帰りストリッピング術の術後経過

ストリッピング手術は、古くより最も広くおこなわれてきた静脈瘤の確実な治療法です。当院では、この手術を日帰り入院でおこなうことを勧めています。当院での一般的治療経過についてご説明いたします。

【手術当日、術前】

朝食はいつもの量の半分程度にしてください。それ以降は絶食となりますが水分は昼まで可能です。指定の時間までに来院し入院手続きを進めてください。

【手術当日、術後】

術直後に足に自己粘着性弾力包帯を巻きます。病棟にて1時間安静臥床後、帰宅となります。
弾力包帯を巻いている期間(3日間)は、膝は出来るだけ曲げないような歩行もしくは座り方をしてください。(弾力包帯が、膝の裏にくい込むため)

  • 食事、洗濯、掃除などの家事は差し支えありませんが、仕事(強制労働)はひかえてください。
  • 弾力包帯のため、足背がむくんだり、皮膚にくい込んで痛くなることがあります。むくみは心配ありませんが、痛みに関しては、弾力包帯に5cmほどの切り込みを入れ減圧してみて下さい。もし、それでも痛みが良くならないようであれば、当院救急外来へご連絡ください(Tel:0156-62-2513)。
  • 抗生物質、痛み止め、胃薬が3日間処方されますので、毎食後に服用してください。

【術後3日目】

術後、初めての外来受診日となります。鼠径部の抜糸(抜鉤)をおこない、創処置は終了します。弾力包帯をはずし、代わりに弾性ストッキングを装着していただきます。この日の夕方よりシャワー浴が可能となります。入浴はもう少しお待ち下さい。

  • 足のむくみや、ストリッピング後の内出血が多少見られます。むくみは弾性ストッキングに替えて2~3日で、内出血は2~3週間で自然に治ります。
  • シャワー浴により鼠径部のドレッシングが濡れてしまいますので、ご自分で新しいものに貼り替えて下さい。
  • 仕事(極端な重労働は除く)を始めていただいて結構です。但し、正座は傷の安静のため、術後1ヶ月間はひかえたほうがよいでしょう。
  • 弾性ストッキングは1ヶ月間の装着が必要です。就寝時は脱いでいただいて結構です。

【術後7日目】

術後、2回目の外来受診日となります。傷の状態を観察します。

  • 傷の状態を観察します。
  • 静脈不全症状が改善するために、術前みられた下肢のだるさ、夕方のむくみ感、こむら返りなどはほとんど消失します。
  • 弾性ストッキングは引き続き履いていただきます。
  • 肉体労働は普通に行えますが、汗をかくような重労働や激しいスポーツは下肢の内出血が消退してからにしましょう。
  • 温泉は感染を誘発したり炎症を助長したりしますので1ヶ月間控えましょう。アルコールは適量であれば問題ありません。

【術後1ヶ月】

術後、3回目の外来受診日となります。脈波検査をして問題なければ弾性ストッキングは終了となります。

  • 脈波検査をして手術の効果を判定します。正常域に入っていれば弾性ストッキングは終了となります。
  • この時点では手術の影響も次第になくなり、下肢は全体的に細くなってだるさもとれ、健康な状態になります。
  • もし、むくみやだるさなどの症状が残っている場合は、エコー検査により再評価をします。
  • 瘤は通常消失していますが、まれに小さいものが残っていることがあります。この場合は、注射で治す硬化療法という方法をおこなうことがあります。(外来で、10分間ほどで終了します。)

【術後6~12ヶ月】
小さい皮膚切開のため、傷はほとんど分からないくらい綺麗になります。

術後4ヶ月の比較

血管内レーザー焼灼術
レーザー焼灼術とは?

下肢静脈瘤に対するレーザー治療は、逆流のある静脈内部にレーザーファイバーを挿入し、レーザーで静脈を焼灼して血流を遮断してしまう治療法です。写真① 本邦では2011年1月にレーザー治療器(波長980nm)が保険適応となり臨床応用されて来ました。しかし、このレーザーは痛みや出血がストリッピング手術以上に強く問題となることがありました。2014年5月からは、これらの問題点を大幅に改良した新たなレーザー治療器(波長1470nm)が保険適応となりました。当院では、ELVeS®レーザー(波長1470nm インテグラル社製)を導入し治療に当たっています。写真②

写真①(画像提供 株式会社インテグラル)

写真②(画像提供 株式会社インテグラル)

当院でのレーザー焼灼術について

伏在静脈の高位結紮を行わないレーザー治療では、その20%程度にEHIT(endvenous heat-induced thrombus)という熱による血栓が生じます。この血栓が増大し、深部静脈血栓症から肺塞栓症を発症する危険性はほとんど無いといわれていますが皆無ではないようです。また、静脈逆流の根っこである伏在大腿静脈接合部の分枝血管を処理しないために、分枝血管からの再発を来す可能性が指摘されています。当院のレーザー治療では、これらの問題を回避する目的で、原則として伏在静脈の高位結紮術を併用しています。レーザーファイバーは鼠径部から下行性に挿入し血管内焼灼を行います。高位結紮の皮切は鼠径部の皺にあわせて小切開するため、創が目立つことはありません。

また、施設によってはレーザー治療のみを施行して表在静脈瘤を切除しない実施医も多く見られます。頻度は少ないですが、症例によっては瘤内血栓を生じ疼痛や色素沈着を起こしてしまうことがあります。これらの合併症を回避し、より確実で満足度の高い治癒を目指して、当院では必要に応じて瘤切除を追加します。針穴から特殊な器械を使って切除するStab Avulsionという方法ですが、創は針穴のためほとんど分からなくなります。日帰り入院手術となります(同日入退院)。侵襲が比較的軽い治療法であるため、翌日より通常の仕事が可能となります。遠方から来院された患者さんは数日の入院対応も可能ですので、外来看護師にご相談ください。 尚、上述した高位結紮術やStab Avulsion法を追加しても、治療費はレーザー焼灼術のみの場合と同額になります。

2019.7.4「下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術ガイドライン2019」が公開されました。この中で、レーザー治療に対する高位結紮術は、推奨度は低いものの「併施しないように提案する」となっています。当院では高位結紮術を併施することを原則としていますが、もし、高位結紮を併施しないレーザー治療を希望される場合はご希望に応じますので、ご相談頂ければ幸いです。

麻酔について

麻酔は日帰りストリッピング術と同様、局所麻酔、静脈麻酔および軽い全身麻酔を併用して行います。

術後

術後は1時間の安静臥床後に歩行して問題ないことを確認して帰宅していただきます。当日は車の運転は控えてください。その後はストリッピング手術に準じて通院していただきます。詳しくはストリッピング手術のページを参照してください。ストリッピング手術と異なる点として、静脈閉塞状況を確認するため、術後に下肢超音波検査が必要となります。

最後に

下肢の静脈瘤にお悩みのかた、まずは受診してみてはいかがでしょうか。静脈瘤に関する診療を希望される患者さんは、諸検査がありますので朝10時までに受診してください。下記の静脈瘤問診票を印刷し記入して来院して下されば診察がスムーズにおこなえます。(印刷の出来ないかたは当日外来での記入となります)